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那覇地方裁判所沖縄支部 平成2年(ワ)203号 判決 1991年6月17日

原告

國吉真作

被告

勝連町農業協同組合

ほか一名

主文

一  被告宮城アキは、原告に対し、金七八三万四七六一円及びこれに対する昭和六二年九月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告勝連町農業協同組合は、原告に対し、被告宮城アキに対する本判決が確定したときは、金七八三万四七六一円及びこれに対する昭和六二年九月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。

五  この判決は、原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求(被告組合に対する請求は将来請求と解される)

一  被告宮城は、原告に対し、金一四二九万五六五四円及びこれに対する昭和六二年九月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告組合は、原告に対し、被告宮城に対する本判決が確定したときは、金一四二九万五六五四円及びこれに対する昭和六二年九月一四日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告宮城運転の自動車に衝突されて傷害を負つた原告が、被告らに対しその損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

昭和六二年九月一四日午後六時五〇分ころ、中頭郡勝連町字南風原一番地先の交差点において、原告(昭和五八年一〇月三日生)が、右折のため一時停止中の被告宮城運転の車両の直前を横断していたところ、他の車両の動静に気を奪われ、前方注視を欠いたまま右折進行を始めた被告宮城の車両に衝突され、頭蓋骨骨折、右脛腓骨骨幹部骨折の傷害を負つた。

被告宮城は本件車両の保有者として、被告組合は自動車共済保険の保険者として、それぞれ原告の損害を賠償すべき責任がある。

原告は、昭和六二年九月一四日から平成元年九月一二日までの間に、一六日間の入院治療と実日数一二日間の通院治療を受け、同日後遺症の症状が固定した。

原告は、自賠責保険から治療費等として一四五万九六四〇円の支払を受けている。

二  争点

被告は、後遺症の程度及び損害額(一部)を争う。

第三争点に対する判断

一  後遺症及びその程度について

1  醜状痕について

前記傷害の結果、原告の左頭頂部後頭部に、幅〇・七センチ・長さ一二センチ、幅〇・五センチ・長さ七センチの、T字型の醜状痕の存在することは当事者間に争いがないところ、右障害について、原告は後遺障害等級表一二級一三号に該当する旨主張し、被告は一四級一一号に該当する旨主張する。

右醜状痕の大きさ、原告の年齢と今後の成長を考慮すると、右醜状痕は、てのひら大以上の瘢痕と認めるのが相当であり、甲六によれば、右醜状痕が人目につくものであることは明らかである。

したがつて、右醜状痕については、男子の外貌に著しい醜状を残すものとして、後遺障害等級表一二級一三号に該当するものというべきである。

2  長管骨の変形障害について

前記傷害の結果、原告の右脛骨に約一〇度の外旋変形(外旋ゆ合)が存在していることは、当事者間に争いがないところ、右障害について、原告は後遺障害等級表一二級八号に該当する旨主張し、被告は後遺障害に該当しない旨主張する。

下肢における長管骨の変形障害については、その変形を外部から想見できる程度のもの、不正ゆ合の場合には一六五度(一五度)以上湾曲してゆ合したものをいうと解されるところ、原告の右脛骨の外旋ゆ合は約一〇度にとどまるというのであるから、右外旋変形は、長管骨の変形障害には該当しないものと解するのが相当である。

二  損害額

1  治療費 一〇五万九六四〇円

争いがない。

2  付添看護婦 四九万五四八一円

争いがない。

3  通院費 三万六三二〇円

争いがない。

4  諸雑費 一万一二〇〇円

争いがない。

5  文書料 八〇〇円

争いがない。

6  傷害慰藉料 七八万三三六〇円

争いがない。

7  逸失利益 〇円

(請求額 九二〇万八四九三円)

前認定のとおり、原告は後遺障害等級表一二級に該当する後遺障害を有しているが、その内容に照らし、労働能力を喪失したものとは認めがたい。

8  後遺症慰藉料 二一七万円

(請求額 三一六万円)

後遺障害の程度、本件事故の態様、原告の年齢その他諸般の事情を考え併せると、右金額が相当である。

9  人工カツラ代 四〇三万七六〇〇円

(請求額 四八四万五一二〇円)

前記醜状痕の部位、程度、内容、原告の年齢その他諸般の事情を考え併せると、原告の頭部に向後少なくとも五〇年間、人工カツラを着用する必要性は、これを否定しがたいものと認められる。

そして、甲五及び弁論の全趣旨によれば、右醜状痕に対応する人工カツラは二日に一度取り替える必要があるため、常時二セツト(価格四〇万三七六〇円)を所持することを要し、その耐用年数は五年であることが認められるので、二〇セツト分を損害として認めることとする。

10  以上の合計は、八五九万四四〇一円である。

三  損害の填補 一四五万九六四〇円

争いがない。

したがつて、残損害額は、七一三万四七六一円である。

四  弁護士費用 七〇万円

(請求額 一〇〇万円)

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照らすと、弁護士費用の額は、右金額が相当である。

(裁判官 中村隆次)

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